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なぜ、職員が辞めるのか?を今一度考えよう

      2015/09/09

採用活動のピークが終わり、多くの会計事務所が新たに採用した職員を迎えていると思われます。採用した一方で「辞められたら困る」と心配している所長先生も少なくないのでは。

今回は人事管理のエキスパートである宮子智子氏が、税理士法人や税理士事務所に職員定着のコンサルティングを実施した経験を踏まえ「職員が辞めるメカニズム」を解説いたします。

職員が辞めない人事管理

「なぜ、職員が辞めるのか?」

私はいつもこの問題についてクライアントの事業主にお話しする際に「退職の気持ちは花粉症のようなもの」と例えています。

つまり、ちょっとずつ花粉がたまり、あるとき急に発症する花粉症と、退職の気持ちは似ているのです。少しずつたまってきた不安・不満あることをきっかけにオーバーフローします。あるいはきっかけもなくある日突然オーバーフローする可能性もあります。そして、花粉症と同様に一度発症すると、退職の気持ちは戻りません。

「慰留をしても辞意が固く、簡単に気持ちが変わらなかった」なんて経験は、経営者ならどなたでもあるかと思います。

職員の日常的な6つの不安・不満

職員の日常的な不安・不満は主に以下の6つに分けられます。

●将来が見えない
いつも仕事に追われている中、ふと考えたときに、このような不安を感じてしまいます。職員にとって将来のモデルケースは所長先生。しかし、経験が浅い職員からすると「自分は先生のようにはなれない。どうしたらいい?」と、将来が見えなくなるのです。

●いつも忙しい
精神状態が良好なときは、忙しいことは充実さにつながります。しかし、ふとしたときに「いつも仕事に追われていていいのだろうか?」「自分の時間はどうなるのか?」と不安になってしまいます。

●社会保険に加入できない、加入してくれない
個人事務所の場合仕組み上、社会保険には入れません。一方、ある程度年齢が上がり、健康面や体力面で自信がなくなってきた職員は、社会保険に入っていないと不安です。厚生年金がないことも、大丈夫なのかと心細くなります。特に税理士事務所の職員は、お客様に社会保険の加入手続きをしたり、社会保険のメリットを話す立場にあるだけに、余計不安になってしまうのです。

●このままで良いのかという不安
税理士事務所で働いていると、大企業と違って5年後、10年後の目標となる上司や先輩がいない場合が多いです。「このままいて所長先生のようになれなければ自分はどうなるのだろう?」と不安になってしまいます。

●自分の居場所がない
ある程度ベテランの職員に対して「仕事を任せているから、細かい指示なんてしなくていい」と思っていませんか。すると職員は「声をかけてくれない。気にもとめてくれない。自分じゃなくてもいいのでは?」と不安になるものです。

●近過ぎて聞けない、言えない
この問題は士業事務所ならではです。常に所長先生が近くにいて「こんなこと聞いても、言ってもいいのだろうか?」と、人間関係が濃過ぎるがゆえ不安になります。

所長先生に聞けない、言えない状態だと、仕事が忙しいときに「親の手術」「子供の授業参観日」「友人の結婚式」などがあっても遠慮して休まなくなります。すると「親の最期をみとれなくなる」「家族の会話がなくなってしまう」「自分の結婚式ができなくなる」と不安になってしまい「辞めるなら今しかない」と退職の気持ちがオーバーフローしてしまうのです。

これらが、職員が辞めてしまう心理状態です。職員の退職を心配している所長先生は、この仕組みを理解しておきましょう。

『税理士事務所の職員が辞めない人事管理』

宮子智子氏
株式会社LM&C代表取締役。平成7年11月社会保険労務士試験合格。9年1月宮子労務管理事務所開所。12年1月確定拠出年金教育普及協会設立。13年10月東京プロフェッショナルFP協同組合設立。15年4月NPO法人退職金企業年金アドバイザーズネットワーク設立。19年9月株式会社LM&C設立。現代表取締役。

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