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税理士法人チェスターの経営手法に学ぶ会計事務所成長の秘密

      2015/09/14

2014年4月22日(火)、24(木)に東京・大阪で行われた「会計事務所の顧客拡大 ビジネスフェア2014」。相続専門の会計事務所として急成長を遂げている税理士法人チェスターの代表社員荒巻善宏氏(公認会計士・税理士)をお招きし、特別講演をしていただいた。

今回は講演で語られた、高収益を実現する事務所経営の仕組みや、数々の常識を覆したマーケティング手法についてご紹介する。

受任件数にこだわった経営戦略数の力を事務所経営に活かす

開業からわずか6年で相続税申告受任実績累計800件を達成した税理士法人チェスター。その急成長の理由のひとつに、受任件数にこだわった経営戦略がある。

「最近出た辻・本郷税理士法人の本郷孔洋先生の自伝(『私の起業ものがたり』東峰書房刊)の中に『質は量に比例する』という一文が出てきます。チェスターの6年間を振り返ってみても、その通りだったなと感じます」と、代表社員の荒巻善宏氏は話す。

開業当時、51件だった受任件数も平成25年度では228件に。相続税の申告件数では日本でもトップクラスの事務所に成長を遂げた。

荒巻氏と共同経営者である福留正明氏、ともに開業当時26歳。資金も人脈も実績もないなかでどのようにして日本トップクラスの相続専門事務所へと歩を進めたのか。

インターネットから紹介へ時代とともに変化する集客方法

開業当初、事務所の成長エンジンとなったのはWebマーケティングだった。

税理士法人チェスターの開業当時(平成20年度)、獲得した51件の相続税申告の70%がインターネット経由での受注。当時、相続税申告に「強い」会計事務所は多くあったものの、相続税申告「専門」の会計事務所は少なかった。ましてや、相続税申告専門のサービスをインターネット上で展開する事務所はまれ。そのため、「相続 税理士」といったビッグキーワードでリスティング広告を出稿しても、1クリックあたり約100円で出稿できた時期でもあった。

「とはいえ、いずれ自分たちの真似をする事務所が出てくるだろうと思っていました。ホームページに頼った営業戦略ではいけない、そう考えて金融機関や生命保険会社などとの業務提携を強化していこうと考えました」(荒巻氏)

この割合は5年後の現在、大幅に減少している。平成25年度のホームページ経由の受任は28%。代わりに金融機関や生命保険会社からの紹介が62%と飛躍的に向上。

「Webに頼ってはいけない」と考えてから舵を切った業務提携の種まきが、大きく花開いた結果となっている。

業務提携はWin-Winではないギブ&ギブで信頼を得る

相続を事業の柱にする際、金融機関や保険会社、不動産会社、葬儀会社との業務提携は避けては通れない。

会計事務所が業務提携を結ぶための戦略において「Win-Winの関係を構築しようと考えるのは誤っている」と話す。

「Win-Winの関係とよく言いますけど、これは対等な事業者同士が使う言葉ですよね。僕らはお客様を紹介してもらう立場ですので、その関係は成り立たないんです。あくまで『ギブ&ギブ』。こちらが与えられ受任件数にこだわった経営戦略数の力を事務所経営に活かすものはすべて提供してはじめて、『そこまでやってくれるなら紹介しましょうか』と言ってもらえる」(荒巻氏)

相続案件はいつどこで発生するのか分からない。だから広く提携する必要がある。

荒巻氏は、営業しに行って「お客様を紹介してください」とは言わなかった。徹底したギブで信頼を築いていった。

●営業マンのための勉強会を開催
●営業マンの悩み、疑問などに無料で答える
●外部セミナーも無料で引き受ける

これらは一例だが、チェスター側で提供できるサービスは惜しみなく提供する。

やがて「そこまでやってくれるなら」と、お客様を紹介してくれるようになっていく。

「会計事務所側に、生命保険の案件がたくさんありますので紹介します。代わりに、税理士を探している方を紹介してくださいならWin-Winですよね。でもそれは難しい。自分たちができることを徹底的に提供していくほうが現実的だと考えました」(荒巻氏)

相続専門の会計事務所としてのブランディングが浸透し、全国的にも名が知られるようになったいまは、生命保険会社側から声がかかるようになってきた。

これも、数にこだわり徹底したブランディングを行った成果だ。

歯科医の説明法から得た生前対策のクロージング手法

生前対策の案件には3つのフローがある。

1.問題点の抽出
2.対策の提案
3.対策の実行

この3つのなかで、もっとも重要なフェーズはどこだろうか。

生前対策は顧客にとっては腰が重い。相続税の申告は10 ヵ月以内に行わなければならないと義務付けられているが、生前対策はいま行わなくても特に問題はない。

「一番重要なのは『問題点の抽出』です」と荒巻氏。

これは荒巻氏自身が歯医者に行ったときに受けた、医師からの説明でピンときたのだという。

歯のクリーニングで訪問した歯科医でのこと。初診のためにレントゲンを撮ったところ、医師から次のように告げられた。

「親知らずを抜歯しないと、いずれ健康な歯をすべて抜かなければならなくなりますよ」

軽い気持ちでクリーニングのために訪れたにも関わらず、前のめりに説明を聞く形になった荒巻氏は、病院を出る頃には親知らずの抜歯を決意していたという。

このエピソードはいくつもの示唆を含んでいる。歯科医から「親知らずの抜き方」を、いくら丁寧に説明されても抜歯しようとは思わなかっただろう。対策しようと決意したのは、抜かないとどんな問題が起こるのかを説明されたからだと荒巻氏は語る。

「数多く出版されている生前対策の解説本では、『生前贈与で節税ができますよ』と具体的な方法がたくさん紹介されています。でも、そういう対策法を並べて説明しても伝わらないんです」(荒巻氏)

Webや紹介から集客した見込み客を成約するためのクロージング手法の確立もまた、チェスターが飛躍的な成長を遂げられた理由のひとつと言えるだろう。

どれだけ高い志を立てられるか日本一の事務所のその先へ

今後、税理士法人チェスターはどこへ向かっていくのか。

平成25年度の受任件数が228件。来年度には500件を達成する見込みだという。中期的な目標としては、3年以内に1,000件獲得できる仕組みを構築したいと荒巻氏は話す。

開業業当初に思い描いていた「相続税で日本一の事務所になる」という夢物語も、現実的な視野に入ってきた。

「開業したばかり、福留と二人だけでやっていたころ、僕らには何もありませんでした。それでも『日本一の事務所を作ろう』と話しているだけでワクワクしました。これは今も同じです」(荒巻氏)

成長していくためには大きな志が必要だ。どれだけ大きな目標を立てられるかは経営者の大切な資質の一つと言ってもいい。

「僕たちは日本一になるためには何をしなければならないかだけを考えて経営してきました。うまく行ったこともあればうまく行かなったこともたくさんある。ユニクロの柳井正さんの著書に『一勝九敗』(新潮社刊)がありますが、まさにその精神です。それでもやってこれたのは、日本一の事務所を作るというその思いがあったからです」(荒巻氏)

来年には相続税の改正も控えている。今後は、これまでのノウハウを活かして税理士法人チェスターとして全国展開していきたいと話す。

従来の会計事務所経営とは一線を画したその活動やノウハウから学べることは多い。

『税理士法人チェスターの相続ビジネスノウハウ』

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