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事業承継の際に起こりうる人的トラブルとは?

      2015/09/08

企業の事業承継を行うにあたって大切なのは何か。税理士ならば、真っ先に思い浮かぶのは自社株対策です。しかし、それだけでは不完全なことも実感しているはず。事業承継問題を解決するには「ヒト」からのアプローチが欠かせません。事業承継は「ヒト」に大きなリスクがあり、トラブルの元凶になっているからです。

今回は宮子智子氏が「ヒトからアプローチする事業承継」について解説します。

事業承継のアプローチは「ヒト」から!

「ヒトからアプローチする事業承継」とはどういうことでしょう。現社長が病気や身体の衰えから引退したり、あるいは死亡して事業承継が行われるときに、以下のような事項が社員から申し立てられるケースがあります。

●実はサービス残業(未払賃金)があるので払ってほしい
●(コア社員が)実はこれを機に退職したい
●実はこのアイデアは私のものなので、著作権を買ってほしい
●実は前社長が「この役職にする」「いくらの年収に引き上げる」と約束してくれていた
●実はセクハラ(パワハラ)を受けていたので損害賠償請求したい

このように、事業承継を機に「今まで言えなかったんだけど実は…」と告白する社員が続出し、問題が表面化し、事故へと発展するケースが多いのです。

なぜ事業承継をきっかけに人的トラブルが起こる?

なぜ、事業承継をきっかけに人的トラブルが起こるのでしょう。その理由のは、以下の3つが多いと考えられます。

①現社長に対する不満
今までオーナー社長として強いリーダーシップを発揮していた一方で、ワンマンに近い状態で経営手腕をふるっていた社長に対する不満が、一気に出てくる。

②次期社長への不安
急に代わってしまった次期社長に対して「本当にこの社長についていって大丈夫なのだろうか」という不安が広がる。

③コミュニケーション不足
ワンマンオーナー社長の会社では、社員は社長の指示だけで仕事をしているケースが多く、社員同士のコミュニケーションが少ない。そのため、他の社員に相談せず「代替わりを機に、言ってみてなんとかなるものなら言ってみよう」と申し立てるケースが多い

現社長が元気なときだからこそ諸問題を解決する必要がある

多くの社長は「わかってはいるけれど、それなりに会社がうまく回っているし、社員も一生懸命働いてくれている。何も今そんなところに手をつけなくてもいいのでは」と考えています。一方で、「自分が元気でリーダーシップをとっているときにこそ、トラブルの種となる諸問題を解決できる」とも考えています。

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現在、事業承継を考えている社長は、この2つの考えがシーソーのように動いている状態といえるでしょう。この膠着状態を断ち切るのが「ヒトからアプローチする事業承継」なのです。

今は会社がなんとか回っているけれど、事故が起きるとお金にかかわり、会社の存続にも影響します。「ここを一緒に解決しましょう」と説得力のある提案ができるのは、社長の一番近くにいる税理士先生ではないでしょうか。

「会社をきちんと残したい」「かわいい社員たちの雇用を守りたい」「自分の身内に会社をしっかりと継がせたい」と思っている社長に対して「事業承継の際はこういった事故が起こります」「こんな可能性がありますよ」と説明し、「だから一緒に解決しましょう」と提案することで、迷っている社長の背中を押すことができます。

事業承継が必要な顧問先を多く抱えている税理士先生は、起こりうるヒトに関するトラブルの可能性からアプローチして問題解決を提案してみてはいかがでしょう。

『ヒトからアプローチする事業承継』

宮子智子氏
株式会社LM&C代表取締役。平成7年11月社会保険労務士試験合格。9年1月宮子労務管理事務所開所。12年1月確定拠出年金教育普及協会設立。13年10月東京プロフェッショナルFP協同組合設立。15年4月NPO法人退職金企業年金アドバイザーズネットワーク設立。19年9月株式会社LM&C設立。現代表取締役。
[資格]社会保険労務士/DCアドバイザー/ ファイナンシャルプランナー(CFP)/ 1級ファイナンシャルプランニング技能士/ 認定キャリアコンサルタント/ 産業カウンセラー/コーチ/ 米国NLP協会マスタープラクティショナー/ カードセラピスト
[肩書]確定拠出型年金教育・普及協会専門委員/東京プロフェッショナルFP協同組合(東京都知事認可) 理事/NPO法人退職金企業年金アドバイザーズネットワーク 専務理事

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