広瀬元義・勝手にコラム『業界最前線』

<vol.20>「試算表」「申告書」は 「原石ビジネス」

先日、大前研一氏の会で40人ほどの経営者と一緒にインドネシアに研修に行ってきたので、その話をしたい。

今回はインドネシアのバリ島とジャカルタに研修で行ってきた。大企業の2代目、3代目社長が多く参加していたが、そのなかに大塚製薬やユニ・チャームの現地法人の社長もいた。彼らの話から多くの気づきを得たのでこの場で紹介しようと思う。

大塚製薬のインドネシア現地法人の社長は、まだ40歳くらいの若さ。社長になって5年ほどで、非常にバイタリティーがある。 「インドネシア人と仕事をしていくなかで重要なのは『インドネシア人はバカだから』と見下した考えを持たないこと。そう思った時点ですべてを断絶してしまいます」

彼が話していたことでこのことが印象に残った。そうではなく「一緒にやっていくんだ」という前提で仕事を進めると、すべてがうまく回っていくという。

社長はこんなことも話していた。「上司は何に怒るのかということを伝えることが重要」「大塚製薬のことを理解して語れる社員が育ってきたときに、事業がうまくいったんだと思えてきた」。私もなるほどと実感した次第である。

これらは会計事務所も同じである。所長が「あの職員はバカだから」なんて考えた時点ですべてを断絶してしまい、事務所は成長しなくなる。

また、事務所のことを理解して語れる職員を育てることが大事で、そうした職員が育ったときにはじめて事務所が成長するのではないかと思う。


会計事務所サービスの本を正せば?


ユニ・チャームはご存知の通り、生理用品や紙おむつで有名な会社。現地法人の社長さんはインドネシアの民族衣装のような格好で登場。色黒で現地人のようにも見えた。ここも大塚製薬並みに急成長した。

進出当初は、2000箇所以上の女子トイレから、どんな生理用品を使っているかリサーチしたというから相当大変な苦労をしたようだ。

生理用品業界はニーズに合わせて厚さや形状を変えて「28センチ夜用」など、次々と新商品を開発している。私も現地法人の工場に入って見学したが、原材料の大きな紙のパルプロールを見て、はっと思った。

「生理用品や紙おむつは、本を正せば紙。さらに言うと、ただの木である。それに付加価値を加えているだけなのだ」  このときに、今夏に行ってきた内モンゴルのことも思い出した。

現地でとれる岩塩は、そのもの自体では高く売れないが、細かく砕いてミルつきの小瓶に入れたり、塊に空洞をつくって中にランプをつけて「塩のランプ」とすれば、いい値段で売れる。このようにいかに付加価値を加えていくかがビジネスには重要なのである。

これらを会計事務所に置き換えるとどうなるか。試算表や申告書をつくることは、ただ縦罫を合わせただけの「原石」を売っているのに過ぎないのではないか。私はふと思ったのである。


 「乏しい資源」から生まれた付加価値


研修では、インドネシア人と日本人の違いも学んだ。インドネシア人は「楽観的」「家族が優先」「高い宗教心」、対する日本人は「悲観的」「家族が犠牲」「低い宗教心」となるという。

そして、さらに重要なことは、インドネシアは資源が豊富だが計画性は低く、日本は資源が乏しいが計画性は高いという点である。一年中温暖なインドネシアなら、米をいつ植えてもちゃんと育つが、日本ならば田植えの時期を決めて、それまでの準備を行うというように計画的に進めないとうまくいかない。

確かに日本はインドネシアと比べて資源が乏しいが、どちらが豊かか考えてみると一目瞭然。いろんな原石に付加価値を加えてビジネスを展開することで、日本は成長していったのである。

これと同じで、会計事務所も試算表や申告書といった原石だけにこだわるのではなく、決算カウンセリングや経営計画といった付加価値を加えてビジネスを広げていくことを提唱する。そうすることで顧問料アップにつながり、事務所の価値も上がっていくのではないだろうか。
 

広瀬 元義
株式会社アックスコンサルティング 代表取締役


会計事務所マーケティングの第一人者。1988年 株式会社アックスコンサルティングを設立。不動産コンサルティング、会計事務所向けコンサルティングを中心に業務を展開。2005年からは、会計事務所のネットワーク組織『FANアライアンス』を新たにスタート。Webコンサルティングやアウトソーシングなど新しいビジネスコンテンツをはじめ、経営計画や決算カウンセリングの開発を手掛け、多くの会計事務所の注目を集めている。また、AAM(米国会計事務所マーケティング協会)の正式メンバーとして常に最新情報を入手し、日本の会計事務所業界の成長発展に貢献している。


 
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