広瀬元義・勝手にコラム『業界最前線』
<vol.17>なぜ、勉強ができるのに頭が悪い人がいるのか
「勉強ができるのに、頭が悪い」。こんな人が周りにいないだろうか。
学歴は申し分ないのに、どうしてそんな風に考えるのか、どうしてそんな態度をとるのか、どうして人の話を受け入れないのか、以前から疑問に思っていた。
そんな疑問を解決する本に最近出会った。林成之さんの『望みをかなえる脳』(サンマーク出版)という本を読み、非常に感動した。これは、会計事務所が組織としてパフォーマンスを上げる際に非常に役に立つので、今回紹介したい。
"ケタ違いにすごい医療"とは?
林さんは脳神経外科の医師で、日本大学医学部附属板橋病院の救命救急センターに部長として立ち上げに参画した。その際にスタッフを集めてビジョンを宣言した。
「これまでとは『ケタ違いにすごい医療』をしよう。例え瞳孔が開いた患者さんだろうと、呼吸が停止した患者さんだろうと、一人残らず命を食い止め、やがて必ず社会復帰させる。そんな最強の医療チームをつくろう」
こんな目標を掲げたという。ご存知だと思うが、救命救急センターの現場は、事故で瀕死状態だったり、極限的な重症患者が次々と運び込まれ、助からないケースばかり。スタッフは皆、打ちのめされた状況で「なんでこんな仕事を引き受けたのか」という後悔にさいなまれる人も少なくないという。「なぜ、そんな不可能な目標を話すのか」と、多くのスタッフが首をかしげたらしい。
なぜ林さんはそんな大きな目標をコミットメントしたのだろうか。これこそ「仲間になりたい」という人間の本能を活用した、最強の組織づくりだからである。
脳には「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」の3つの本能があるという。構成員の仲間意識を高めることで、チームワークを結集すると同時にメンバー個々の能力を最大限に発揮できる組織へと成長できるのだ。
それから、林さんが率いる救命救急センターでは、毎朝のカンファレンスに専門分野の壁を越えて全員が参加し、問題点を徹底的に討議して情報を共有していった。
パフォーマンスを上げる4つの行動
この本にも書いてあるが、具体的にチームのパフォーマンスを上げるには、次の4つのことを行えばいい。
①明るく前向きに仕事に取り組もうこういうことを周知徹底することで、心の動きが変わっていく。心と脳は連動しているので「心のよさ」が「頭のよさ」へとなるのだ。
②仲間の悪口を言うな
③コミュニケーション能力や面倒見のよさを発揮しろ
④否定語を使うな
だから、冒頭で話した「勉強ができるのに、頭が悪い」というのは「心のよさ」が不足しているために、脳が持っている元来の資質をつぶしているような状態を指すという。
この、チームのパフォーマンスを上げる4つの行動は、会計事務所にも大いに当てはまる。所長先生が自らいつも明るく前向きに仕事に取り組み、「疲れた」「できない」といったネガティブな言葉を使わないようにすれば、脳を活かしていくことができ、事務所のパフォーマンスが向上していくのだと思う。
仕事で卓越した力を発揮したければ、知識や情報を集めて対処することも大切だが、それと同時に「明るく前向きに仕事に取り組む」「手を抜かず精一杯の努力を惜しまない」「人とのコミュニケーションを積極的に取る」「相手を思いやる気持ちを忘れない」というように、心を働かせるほうがもっと大事。税務の知識をつけることよりも、ずっと重要な気がしてならない。
この本によると、脳は活性化されればさまざまな能力を発揮するという。林さんは元サッカー日本代表監督のオシム氏を救い、北京五輪前には北島康介選手をはじめ競泳日本代表選手に脳の活性化方法を伝授して、メダルラッシュの原動力をもたらしたといわれる、すごい人である。『望みをかなえる脳』という本に、もし興味を持った方がいれば、読んでみることをおすすめする。
これからの会計事務所はチームワークが重要。まずは脳を活性化することからはじめてみてはいかがだろう。
広瀬 元義
株式会社アックスコンサルティング 代表取締役
会計事務所マーケティングの第一人者。1988年 株式会社アックスコンサルティングを設立。不動産コンサルティング、会計事務所向けコンサルティングを中心に業務を展開。2005年からは、会計事務所のネットワーク組織『FANアライアンス』を新たにスタート。Webコンサルティングやアウトソーシングなど新しいビジネスコンテンツをはじめ、経営計画や決算カウンセリングの開発を手掛け、多くの会計事務所の注目を集めている。また、AAM(米国会計事務所マーケティング協会)の正式メンバーとして常に最新情報を入手し、日本の会計事務所業界の成長発展に貢献している。

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