広瀬元義・勝手にコラム『業界最前線』

<vol.14>繁忙期に「パートを行かす」で顧問契約解除!?

現在、当社では「ビジネスマッチング」という顧問先紹介サービスを行っている。そこで、一般企業の社長から「税理士を替えたいから紹介してほしい」という話も多数受け付ける。そこで、とても驚いたエピソードがあるので紹介したい。

3月に、ある会社の社長さんから「税理士を替えたい」という電話を受け付けた。その会社の顧問税理士から「確定申告の時期は忙しいから、御社にはいつもの担当じゃなくて、パートを行かせたい」と言われたそうだ。

その社長は会計事務所に月5万円の顧問料を払っていることもあり「パートでは嫌だよ!」と返事をした。

しかし、税理士さんは「そうはいっても決まったことだから、社長のところだけ『これまで通り』というわけにはいかない」と譲らない。言い争いの末、社長さんは「じゃあ、お宅なんかに頼まないよ!!」と、10年にわたって付き合ってきた税理士との顧問契約を解除したという。


「私はパート」と首から提げる会社は?


今の話を聞いて、変だと思わないだろうか。

確定申告の時期が忙しいのは、私も百も承知である。しかし、もう一度考えてほしい。この場合、馬鹿正直に「パートに行かせる」なんて言う必要は全然ない。「私はパートです」と首からプラカードを提げている会社がどこにあるというのだ。百貨店やスーパーでは「見習中」「研修中」というバッジをつけているが、それは単なるクレーム対策であって、それ以外には「私はパート」なんて表に出している会社なんてどこにもないのだ。

この場合「毎月おうかがいしている担当者は3月で忙しいので、ほかの担当者を御社にうかがわせます。優秀で社長さんにぴったりです。ご安心ください」と言えばいいのでは。仕事がきちんとできれば、社員だろうとパートだろうとまったく関係ない。社員かパートかは、勤務形態が違うだけなのだから。

また、ある社長さんからは「今の顧問税理士が税務署寄りの対応だった」という苦情を受けた。しかし、私に言わせれば、その税理士が税務署寄りだったわけではなく、税務署から受けた指摘を顧問先にきちんとわかりやすく説明していなかったのではないかと思う。説明不足だから社長は理解と納得ができず「税理士を替えたい」となるのではないだろうか。

今の2つの事例で挙げた税理士、会計事務所は、いずれも「昭和タイプ」である。「昭和タイプの会計事務所」というのは、いわゆる「製造業」で、試算表や決算書、申告書を「製造」することだけを考えていればよかった。

しかし、現在の「平成タイプの会計事務所」は「サービス業」である。いかにしてお客様に満足してもらうかという視点で業務にあたらないと、お客様から選ばれないし、顧問契約を解除されかねないのだ。

お客様に満足してもらうには何が必要か。それは相手を受け入れ、相手に合わせ、相手を理解するためのコミュニケーション能力である。今回採り上げた2人の税理士は、いずれもコミュニケーションが下手な例といえるだろう。


コミュニケーション研修は米国の必修科目



そして、先ほど挙げた2人の税理士は、恐らくコミュニケーションに関する研修を受けたことがないと思う。というより、一般的な会計事務所職員は、コミュニケーション研修を受けた経験がほとんどないだろう。

米国の会計事務所ではコミュニケーション研修が必須科目といってもよい。ご存知の通り、米国は『人種のるつぼ』なので、相手の性格や価値観、文化などを受け入れて理解しない限り、ビジネスを進めることが不可能だからだ。よって、非常に優れたコミュニケーションに関する研修プログラムがそろっている。

しかし、日本ではこうしたコミュニケーション研修の教材が少ないというか、ほとんどない。まして会計事務所にフォーカスしたコミュニケーション研修教材なんて、ゼロに等しいだろう。

そんな背景があり、今回、当社では「TCC研修プログラム」というコミュニケーション研修教材を開発した。「コミュニケーション研修をやってみたい」という事務所は、ぜひ問い合わせていただければ幸いである。



広瀬 元義
株式会社アックスコンサルティング 代表取締役


会計事務所マーケティングの第一人者。1988年 株式会社アックスコンサルティングを設立。不動産コンサルティング、会計事務所向けコンサルティングを中心に業務を展開。2005年からは、会計事務所のネットワーク組織『FANアライアンス』を新たにスタート。Webコンサルティングやアウトソーシングなど新しいビジネスコンテンツをはじめ、経営計画や決算カウンセリングの開発を手掛け、多くの会計事務所の注目を集めている。また、AAM(米国会計事務所マーケティング協会)の正式メンバーとして常に最新情報を入手し、日本の会計事務所業界の成長発展に貢献している。 



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