広瀬元義・勝手にコラム『業界最前線』

<vol.12>決算書は「経営者用」と「社員用」を使い分けよう

会計事務所はお客様を維持しながら増やしていく
 「経営の原点」に立ち返ろう



今回は、先生方には「釈迦に説法」みたいだが、決算書についての話をしたい。決算書というと「税務申告用」と「銀行用」があるなんて話を聞くが、あと2つ「経営者用」と「社員用」が存在する。「経営者用」と「社員用」は違っていてもいいのではと思う。

経営者用の決算書とは、事業を継続していく上での安全度がどれくらいあるのかにフォーカスしている。会計事務所は収益性、資金性、成長性の観点から「5つの経営指標」に基づいて関与先を指導しなければならない。

私の著書『イン・ザ・ブラック』にも出ているが「5つの経営指標」とは次の通り。

①効率よく儲けているか?(総資本経常利益率)
②お金に問題はないか? (流動比率)
③潰れないか?(自己資本比率)
④安定的に儲けているか?(経営安全率)
⑤生産性に問題はないか?(労働分配率)

当社のメンバー会計事務所は、これら指標をベースに関与先の指導にあたっている。


小さな数字で示すと何をすべきかわかる


一方、社員用の決算書とは損益状態にフォーカスを当てる。社員一人ひとりに落とし込められるよう、うまく表現することが重要になってくる。

元・佐賀大学学長の上原春男氏は「1分当たりの社員が生み出す利益」を出すといいと説いている。1分間に4~7円程度の利益が出ればいい会社といわれている。

このように数字を小さくすることで、社員の身に浸透していくのだ。

これも『イン・ザ・ブラック』で書いたことだが、アメリカのサウスウエスト航空ではある年、2億2000万ドルの利益が出た。この利益を出すのに、1フライト当たりの利益は何ドルだったのかを、経営陣は社員に質問したという。

サウスウエスト航空の年間フライト数は約73万5000。2億2000万ドルの利益をこのフライト数で割ると、1フライト当たり、たったの300ドルの利益しか出ていないのである。

サウスウエスト航空は国内線が多いので、チケットの平均価格は約59ドル。1フライト当たりの利益300ドルを、この59ドルで割ると、約5人。つまり、5人分のチケット代で利益が出るのである。

だから、仮にチケットの予約を受ける際に電話が切れてしまうといったトラブルが起き、一人の顧客を逃してしまったら、利益の20%が損なわれることになる。このように小さな数字にして表現すると、社員は自分のやるべきことが見えてくるようになる。会計事務所は、このようにして関与先指導にあたることをおすすめする。
 

営業活動をしていない事務所は危機感を


続いて、お客様をどうやって増やすか、基本的な考え方について話をしたい。

ご存知の通り、最近は倒産や廃業、企業の合併や再編で、法人数は減少傾向にある。会計事務所も、黙っていると顧問先は減る一方。今まで営業活動をしていなかった事務所は特に大変で、危機感を持ってお客様を増やすことを念頭に置かなければいけない時代に突入したといえる。

経営の出発点はお客様をつくること。お客様を維持しながらお客様を増やしていくことが経営の原点なのである。つまり、お客様を中心に考えなければならない。

しかし、会計事務所のなかには、お客様を中心に考えていないところが結構あるという話をよく聞くので、そのような事務所は根本的な部分から改める必要があるかもしれない。

お客様を増やすということは、他の会計事務所との競争になる。企業側も複数の会計事務所を天秤にかけ、どれか一つの事務所を選ぶが、そのときに、どうすれば皆さんの会計事務所が選ばれるかを考えてみてほしい。

もちろん、業務の質を高めることは大事であるが、皆さんが一生懸命やればやるほど、他の事務所もそれ以上のことをやろうとするものだ。

これから他の会計事務所との競争力をつけるには、地域ナンバー1になることが求められる。それにはブランディングが不可欠。会計事務所はブランディングを意識しなければならない時代に入ったのである。



広瀬 元義
株式会社アックスコンサルティング 代表取締役


会計事務所マーケティングの第一人者。1988年 株式会社アックスコンサルティングを設立。不動産コンサルティング、会計事務所向けコンサルティングを中心に業務を展開。2005年からは、会計事務所のネットワーク組織『FANアライアンス』を新たにスタート。Webコンサルティングやアウトソーシングなど新しいビジネスコンテンツをはじめ、経営計画や決算カウンセリングの開発を手掛け、多くの会計事務所の注目を集めている。また、AAM(米国会計事務所マーケティング協会)の正式メンバーとして常に最新情報を入手し、日本の会計事務所業界の成長発展に貢献している。


 
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