広瀬元義・勝手にコラム『業界最前線』
<vol.7>良質なコミュニケーションは ラポールの構築から
問題解決から入るのはNG!
「なりたい姿」を気づかせるよう、話を導くことが税理士の役目
数多くの中小企業にアプローチをしていると、税理士に対する話も多数ヒアリングできる。今回はそのなかからいくつかの事例を紹介する。
現在の一般企業へのアプローチはIT系企業が多いのだが、あるIT企業の社長からこんな話を聞いた。
この社長が会社を設立して税理士を探すとき、タウンページを使ったそうだ。電話に出た税理士は「私はITに詳しいです」と答えたので、顧問になってもらったが、実際には、開発費を資産にしてどうするのかなど、いわゆる経費の問題等を理解していなかったそうだ。そして、この会社は赤字を出した。
そして「最初のうちは赤字でもいいんですよ」と税理士は話したという。社長も「そんなものか」と
思っていた。
だが、赤字の決算書では当然、銀行の受けが悪い。社長はあるとき、他の税理士と知り合い、資産計上の方法次第で、赤字にしなくても済むやり方があることを知った。その旨を顧問税理士に話すと「これまでのやり方でいいんだ!」と怒られたという。
最善の意思決定をコントロールする役目
ある経営者が「今期は大変なんです」と決算前に税理士に相談した。しかし、何の手立ても講じてくれなかったそうだ。
もちろん、税理士は経営者ではない。経営についての判断を税理士がどうこう言うことはできないが、経営者は藁をもすがる思いで相談をしている。そこで、まずどうなりたいのかを確認すべきなのだ。
そして、そのなかで何を問題と考えているのか、その問題のなかで何をどのように改善しようとしているのか、改善点のなかでの優先順位はどうなのかと、順番に聞いてあげる。税理士が経営者から相談を受けたときは、これで十分である。
コンサルティングの仕事は、問題解決から入らないのが鉄則。頭の中を整理して、どうなりたいのか、何の問題をいつまでに解決するのかなどを、会話を通じて気づかせることから始まるのだ。「こういう風にやろう」と経営者が答えを出したら「頑張ってください」と支援する。これが良好なコミュニケーションなのである。
また別のIT系社長の話をしよう。ある商品を出して価格決定の際に顧問税理士に相談した。
価格決定の要素として、どれくらい費用がかかったのかを伝えると、税理士は「じゃあ、こういう形で」と価格を決めた。しかし、いざ販売してみると、安過ぎたことに気づいたという。
これはコンサルタントとしての役割が間違っている。意思決定は相手=社長にあり、税理士の役割は儲かるか儲からないか原価計算することなのである。意思決定をすることではなく、最善の意思決定ができるように相手をコントロールすることが役目なのだ。
言動が引き起こす相手の反応を考えよう
これらの話の共通点は「ラポールを築いていない」ということだ。
ラポールとは、自分と相手との間に開かれたコミュニケーションが成り立ち、心が通い合っている状態を指す。
顧問先はもちろん、事務所の職員、さらに家族など、関係するすべての人々とのコミュニケーションは、当然良好な反応を起こさせることが大前提にある。それにはラポールを築くことが欠かせない。自分の言動によって引き起こされる相手の反応について考え、調和をとっていくことが重要なのである。
ラポールは一般企業が税理士に求めているものであり、税理士が心掛けなければいけないこと。企業へのアプローチを通じて、ラポールの大切さを実感した次第である。
株式会社アックスコンサルティング 代表取締役
会計事務所マーケティングの第一人者。1988年 株式会社アックスコンサルティングを設立。不動産コンサルティング、会計事務所向けコンサルティングを中心に業務を展開。2005年からは、会計事務所のネットワーク組織『FANアライアンス』を新たにスタート。Webコンサルティングやアウトソーシングなど新しいビジネスコンテンツをはじめ、経営計画や決算カウンセリングの開発を手掛け、多くの会計事務所の注目を集めている。また、AAM(米国会計事務所マーケティング協会)の正式メンバーとして常に最新情報を入手し、日本の会計事務所業界の成長発展に貢献している。



